日本初の焙煎世界チャンピョン、トップバリスタ、国産珈琲豆生産者など、数多くの関係者と縁を結んだ「コーヒーAIランドジャパン」プロジェクト。そのプロジェクト開始当初から建築代表としてエスプレッソホームも参加していました。
当時の取材記事をご紹介します。
[コーヒーを通して、地域コミュニティを育む縁側カフェ]
コーヒーが地域とつながるきっかけになる!?
『The Roast コーヒーAIランドジャパンプロジェクト』で始まった“おうちカフェ”プロジェクトが、福岡は北九州、「エスプレッソホーム」にやってきました。しかしその様相は、小さな木箱のよう。その人のための一杯のコーヒーを淹れるような家づくりをするエスプレッソホームが思い描くおうちカフェの形とは?
[元バリスタだからこそ気づけたコーヒーと家づくりの共通点]
「コーヒー」と「家づくり」。一見、関係がなさそうな、この2つの要素。しかし実は、この2つの要素には共通点があるのです。
こう語るのは、エスプレッソホームの事業責任者である福原さん。なんと、元バリスタの経歴を持つほどのコーヒーラバー。バリスタというと、香りや味わいに強いこだわりがある人をイメージする方もいらっしゃると思います。しかし福原さんは、目の前の人と一緒に飲む時間や空間も含めて、コーヒーの魅力だとおっしゃいます。その人を想って淹れた一杯を、「おいしい」と共有できることに幸せを感じるそう。つまり福原さんにとってのコーヒーとは、相手がいてはじめて成り立つもので、「目の前にいる人とつながるためのツール」なのです。
そんな福原さんは、実家の材木店に戻り、家づくりを一から学ぶ中で、「バリスタの仕事と家づくりの工程が非常に似ている」と感じたそう。
コーヒーの原液である「エスプレッソ」。多くの豆からほんの少ししか抽出されないこのエスプレッソは、ミルクやチョコレートなどの変化を加えることで、目の前にいる人の望む一杯となります。家づくりも、床や壁、窓やキッチンなどの基盤に、色や風合いなどの変化を加えると、理想の家ができます。つまり、「コーヒー」と「家づくり」には、その人好みの「変化」を加えて、その人だけの特別なものを届けるという共通点があるのです。
「コーヒー」×「建築」。
元バリスタの視点を持ち、相手のための一杯を追い求め、おいしい時間を共有する福原さんのアイデアが、エスプレッソホームならではの家づくりを可能にしているのだと思います。
[縁側カフェ誕生のきっかけは、地域との距離が離れていくという危機感]
そんなエスプレッソホームでは今、取り組みたいことがあるそう。それは冒頭でも触れた「縁側カフェ」。
エスプレッソホームが目指しているのは、近所の方たちが気軽に集える「縁側」のような空間づくり。つまり、地域に開かれた、地域密着型のおうちカフェづくりです。
そもそもなぜ、地域や人に開かれたおうちカフェをつくろうとしているのでしょうか。それは、地域や人とのつながりが、家づくりにとって、とても重要なことだからとおっしゃいます。
福原さんの実家は、福岡 北九州の八幡エリアで100年以上の歴史を重ねてきた材木店。こんなにも長い間、福原材木店が地域に浸透してきた理由の一つに、お母さまの存在があると福原さんは語ってくれました。福原さんのお母様は、地域の行事に積極的に参加し、地域の人とのつながりを楽しみ、大切にする方だったそう。そんなお母さまが亡くなってから以前に比べると、地域の人との距離が開いてしまったように感じていました。福原材木店の長い歴史と家づくりには、地域の人たちとのつながりも大きく影響していることをお母さまの姿を通して感じていた福原さんは、このままではダメだと、気軽に集えるコミュニティスペースをつくろうと決めたのです。
気軽に家づくりの相談やアイデアの交換ができて、世間話もできる。
そしてそこには、人の心を和ませ、人と人とをつなげるおいしいコーヒーがある。
福原さんは、「縁側カフェ」が、地域の人を含め家づくりに関わる全ての人たちと、深く強く楽しくつながるきっかけになるのではと考えたそうです。
[体感することで、より縁側カフェが具体的なものに]
とはいえ、まだ構想段階の「縁側カフェ」。構想を練っている間に、地域の人との距離が開いてしまっては元も子もありません。そこで今回エスプレッソホームでは、期間限定で、移動式の住居空間である「スマートカフェトレーラー」を事務所前に設置し、「プレ縁側カフェ」をスタートさせました。
人と人との距離感が決して窮屈ではないのに近く、ついついおしゃべりが弾んでしまうような空気感がスマートカフェトレーラー内には流れているそう。実際に、以前エスプレッソホームで家を建てた方が事務所に来た際、スマートカフェトレーラーに招待したところ、その空気感や置いてある小物などをみて、「これいいね~!」「うちにも取り入れてみたい」と、会話が弾んだのだとか。
心地よい距離感からは、自然体の会話がうまれます。かしこまった席ではないからこそ、ちょっとしたおしゃべりからいいアイデアに結び付くことだって考えられます。
この「プレ縁側カフェ」をきっかけに、コーヒーを飲みながら地域の人たちが楽しく集うコミュニティスペースのイメージがより具体的になったと、福原さんはおっしゃいます。
[気軽に集える縁側カフェを、地域づくりの起点に]
エスプレッソホームでは、地域密着型のおうちカフェである「縁側カフェ」の存在を、より多くの人に知ってもらい、利用してもらいたいと考えています。この考えの背景にあるのは、家づくり以上に地域づくりに貢献したいという想い。
この想いを実現するには、福原材木店が八幡で積み重ねてきた歴史、そしてお母さまが大切にしてきた地域の人とのつながりをそのまま受け継ぐのではなく、広げていく努力やアイデアが大切になると、福原さんは語ります。
「縁側カフェ」は、エスプレッソホームから地域の皆さんに向けた、「一緒にこの地域で生きていこうよ」という意思表示ではないでしょうか。そしてそこには、人と人とのつながりをよりオープンに、より深く、より楽しくしてくれるコーヒーも。
これから先の未来、「縁側カフェ」を通してどのようなコミュニティが広がっていくのか、私たちも楽しみです。
ライター:クリス