韓国バリスタのキム・ヒョソプ氏は、これまでに2度、私にオリジナルのコーヒーブレンドをつくってくれました。
1度目は、私の結婚式の日。
エチオピア、ケニア、グァテマラ、ブラジルという4種をブレンドした100%スペシャルティコーヒーです。
彼がつくるブレンドには、いつもその農園の想いや、その人のためのストーリーがあります。単純に貴重だから、高いから、安いから、という範囲に収まることはありませんでした。
この時、彼は、次のように話していました。
このブレンドを作るにあたり、色々と悩みました。
特別なスペシャルティコーヒーを探すために、コーヒーの産地を旅し、その特別なコーヒーをロースティングするのに最適なロースターマシンやエスプレッソマシンも購入しました。
ふと気づくと、コーヒーも揃い、ロースター機も揃い、コーヒーマシンも購入していました。それでそのままロースタリーカフェを開くことを決心し、カフェも創業してしまいました。
カフェの名は、バーバラ・ココ(BARBARA COCO)とつけました。
様々なコーヒー農園に通い、最初はコーヒーだけが目に入っていました。ところがある日、幼い子供たちが夜明け前にお父さん、お母さんの手をつないでコーヒーを摘むために山に登る姿を目にしました。陽が沈むころには、その子供たちが麻袋いっぱいにコーヒーの実を摘んで、自分の体重と同じくらいの袋を背負い、山を降りてくる姿を目の当たりにしました。
その子供たちの瞳には、つらさや現実に対する恨みは、見当たりませんでした。僕がカメラをむけると、親と一緒に遊園地ではしゃぎ回ったように、まあるい汗を流しながら、本当にはつらつとした笑顔で笑ってくれました。
小学生くらいに見える幼い少女に名前を尋ねると、「バーバラ」と自己紹介してくれました。
服は汚れ、髪の毛はもつれ、手は泥だらけです。
それがその少女の最初の印象でした。
その子の親は、海抜1700メートルを毎日上り下りしながら、一日中コーヒーを収穫する仕事をしています。つらく大変な作業をしながらも、子供たちをたくましく育てています。
彼らの目にも、子供たちと同じように希望が満ち、明るい笑顔があふれていました。
その時、ふと、こんなことを思ったのです。
家族とは、どんなにつらい環境にいようとも、互いを思い合って寄り添う、かけがえのない縁で結ばれているものだということを。
彼らを通して、本当に大きな感動を受け、生きることの特別さに気づき、コーヒー農園で出会ったバーバラのような子供たちの人生に少しでも助けになればと、バーバラ・コーヒー・カンパニーの略語として、バーバラ・ココとカフェの名をつけました。
このブレンドは、そんな二人の家庭にも、いつも希望と笑顔、互いに寄り添う気持ちがあふれますようにとつくりました。
このブレンドには、美味しいコーヒーを超えた、誰かにとって希望となれるコーヒーという意味を込めました。コーヒーは、嗜好品なので、誰かにはこの上なく美味しいと感じられても、他の誰かには自分の好みのコーヒーではないと思われるかもしれません。
このブレンドに特別さがあるとしたら、エチオピアの2種類の加工プロセスを組み合わせたという特徴があります。
エチオピアは、コーヒーの生まれた国でもあります。
エチオピアのコーヒーは、コーヒーの女王、コーヒーの母と呼ばれもします。それは奥さんを象徴します。
ケニアのコーヒーは、コーヒーの皇太子と呼ばれています。アフリカコーヒー特有の強さ、ボディ、どっしりとした重厚な香りを持ち合わせています。それはあなたを象徴します。
グァテマラとブラジルは、子供、友達、家族などの素敵なパートナーを意味します。
グァテマラとブラジルは、アフリカ系統の華麗で強烈なコーヒーをやわらかく穏やかにしてくれます。
この4種類の原産地別コーヒーが出会い、ハーモニーを奏でる特別なブレンドです。
私にとって、こんなに嬉しい贈り物は、なかったです。
そして、その日、10キロ近いそのオリジナルブレンドを、彼はスーツケース一杯に詰め込み来日してくれました。
ありがとう。とても特別なコーヒーは、その特別な日を飾る素敵な時間をつくってくれました。
ヒョソプ氏、コーヒーには、人を幸せにする力がありますね。
バーバラ・ココにいつか行ってみたいです。